【2009/3】秋季限定栗きんとん事件
№21 秋季限定栗きんとん事件(上) 著者『米澤 穂信』 創元推理文庫 254頁 ☆☆☆
№22 秋季限定栗きんとん事件(下) 242頁
待ちに待った米澤穂信「小市民シリーズ」の第3弾なのだ。『春期限定イチゴタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』と、日常の謎だけで充分楽しませてくれる希有なシリーズなのだ。今回も最後まで騙してくれる、レベルの高い青春ミステリィに仕上がっているのが嬉しい。
本屋の店頭でこの本を見かけると、チョット見た目は、ほとんどライトノベルのように見えてしまう。装丁というかイラストや、タイトルが「ラノベ風」なのでしかたがないのだが、版元が創元社と気がつかないと、大量のラノベに埋もれそうで、ファンとしてはいささか心配になるのだ。米澤の同様な人気連作『古典部シリーズ』は、角川文庫から出ているが、装丁は明らかに大人をターゲットにしているのとは対照的だ。
ま~、お話の設定も高校生が主人公で、デートやら受験勉強の描写が中心なので、いわゆる青春小説の体裁を備えており、見かけは中高生向けと言ってもよいのだ。しかししてその実体は、大人が読んでも充分読ませる仕掛けがあり、中高生だけに読ませるのでは、あまりにもったいないのだ。
今回は、シリーズ初の上下巻に分冊された長編となったが、それにしてもわざわざ分冊するほどのボリュームではない。上下巻合わせても500頁程度だったら、普通は分冊にしないもんだ。京極だったらたとえこの倍の1000頁あったとしても、1冊にしたはず。ま~創元推理文庫の書き下ろしシリーズなので、営業上の理由だろうが・・・。
で、せっかく長編になって楽しみが増えたのかというと、実はそれほどでもない。いわゆる「日常の謎」の数が、長編に見合った分あるわけでもなく、バスを止めるためのボタンを誰が押したか、といったドーデモいいようなレベルの謎がいくつかある程度。メインは放火犯は誰で、どうやって捕まえるか、が主たる謎になる。トーゼンのようにいくつかドンデン返しがあるのだが、やはりこれが上手い。しかし出す出すと言って、さんざん待たせた
割には・・・、なのだがこのシリーズのレベルは維持している。さすがにこのシリーズの設定で次作は苦しいが、貴重な「日常の謎」のポリシーは死守してもらいたいものだ。
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